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航空機・衛星搭載レーダでの立体像再構成への応用

研究背景と研究目的
通常の画像レーダは目標の2次元形状を撮るレーダですが,最近では目標の高さ情報をいろんな方法で計測して, 目標の三次元形状を再生する画像レーダの研究が進められています. このようなレーダは三次元画像レーダと呼ばれ、通常は高さの情報を受信信号に含まれる位相情報を利用して抽出しています.

逆合成開口レーダ(ISAR)を用いた3次元イメージングとその問題点
レーダ画像化手法の最も有用な手法として,合成開口処理(Synthetic Aperture Radar: SAR)があります. 同手法はアンテナが位置を変えて,目標を計測することで様々な角度からの受信信号を合成することで 目標の画像を得ます. これとは逆に目標が移動することを利用して,画像化を行う手法 逆合成開口レーダ(Inverse SAR: ISAR)と 呼ばれる手法があります. 特に船舶や車両等では,目標が運動しているため,アンテナを固定していても その画像が得られることから,船舶監視レーダ等に利用されています. 3次元形状推定では,同ISAR画像の目標点を追跡し,適切な変換を用いることで, 目標の三次元位置座標を再構成することができます. 図1は観測モデルであり,右側は電波暗室における実験風景です. 図2の左は,各観測角度で得られたISAR画像であり,角度により点の2次元位置が変化することがわかります. これを適切に追跡することで,図2の右のような3次元推定像を得ます. RPM 法を用いた3次元イメージング
しかし,ISAR画像に基づく手法では,目標が点の集まりであることを仮定します. 実際には,目標表面は連続体であり,そのような仮定が成立しないため,画像上の追跡が困難になり, 3次元位置精度が著しく劣化します. これを回避するために,近年同研究室で開発しているRange Points Migration (RPM)法を 同モデルへ拡張した例が図3です. 図3の左はISAR画像追跡に基づくものであり,散乱中心が連続的に目標表面を移動するために, 点追跡が困難となり推定精度が劣化してしまいます. これに対し,同図右側のRPM法では,ワイヤ等の連続的な形状を有する目標に対しても, 高精度に3次元形状・位置を推定することが可能であり, より一般的な3次元イメージングレーダへの応用へ有望です.
本研究室では,更にアレイアンテナモデルや偏波情報を利用することで より高精度かつ高分解能なイメージング技術を開発しています.

図1:左:観測モデル,右:実験風景

図2:左:ISAR画像例(点目標),右:3次元イメージング推定例(ISAR)

図3:左:ISARによる3次元推定像,右:RPMによる3次元推定像

参考文献

  • Shouhei Kidera, Hiroyuki Yamada and Tetsuo Kirimoto,
    "Accurate 3-Dimensional Image Reconstruction Algorithm Extending RPM Method to ISAR Model",
    Asia-Pacific International Conference on Synthetic Aperture Radar (APSAR) 2011, Seoul, Korea, 26-30th, Sep., 2011.
  • 山田浩之, 木寺正平,桐本哲郎
    "回転目標モデルにおけるRPM法を用いた高速立体像再構成法"
    電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会, 信学技報, vol. 110, no, 425, SANE-2010-161, pp. 13-18, NICT(神戸研究所), Feb. 2011.