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多重散乱波を用いた不可視領域画像化法

レーダは,視界不良・不可視領域(暗闇・濃煙・濃霧等)での空間精密計測(災害現場での救助ロボット等)が可能であり、 室内ロボットやセキュリティシステム等への応用が有望です。 しかし、室内環境においては壁等からの多重散乱波がレーダ画像において虚像の要因となります。 本研究では、虚像の要因となる多重散乱波を積極的にイメージングへ利用することで、 単散乱波では見ることのできなかった、ターゲットの側面や背面を画像化する技術を提案しています。 この技術を応用することで、室内等の観測領域が制限される場合でも目標形状推定が可能になります。
図1の左図は一回散乱波のみを用いて画像化を行った例であり、長方形側面の再現ができないことがわかります。 図1の素子走査領域において単散乱波のみを利用する限り、側面領域が影領域になることは避けることができません。 これに対して、二重散乱波を画像化利用したものが右図です。 二重散乱波は円と長方形の側面を通過して、素子で受信されるためそれを画像化利用することで同側面を再現することができます。 更に図2は,超波長分解能アルゴリズムと多重散乱波イメージングを融合させた3次元推定例です. 同技術を用いることで,合成開口処理に基づく手法で数時間かかっていたものを 僅か数秒でかつ超波長の精度で目標の影領域を推定することができます. このような研究成果は,従来のレーダ画像再現範囲の限界を超えるもので、電波のみならず、その他の波動センシング分野からの注目も集めています。

図1:画像化例(左:単散乱波合成,右:二重散乱波合成)

図2:3次元画像化例(左:真の目標境界,右:拡張RPM法による推定像)



参考文献

  • Shouhei Kidera and Tetsuo Kirimoto,
    " Fast and Shadow Region 3-dimensional Imaging Algorithm with Range Derivative of Doubly Scattered Signals for UWB Radars", ,
    IEEE Trans. on Antennas and Propagation, vol.60, 2012 (in press).

  • Shouhei Kidera, Takuya Sakamoto and Toru Sato,
    "Extended Imaging Algorithm Based on Aperture Synthesis with Double Scattered Waves for UWB Radars", ,
    IEEE Trans. on Geoscience and Remote Sensing, (in press).

  • Ken Akune, Shouhei Kidera, Tetsuo Kirimoto,
    "Acceleration for Shadow Region Imaging Algorithm with Multiple Scattered Waves for UWB Radars" ,
    IEICE Trans. Commun. (Letter), vol. E94-B, No. 9, pp.2696--2699, Sep, 2011.